クイノーさんのおかげです

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腹部超音波で肝臓の検査をする際、私たちはクイノーの肝区域分類を用いて検査をする。


クイノーの肝区域分類とは肝臓を門脈の走行にしたがってS1からS8までの8つの区域に分類したものである。大きく分けるとS1からS4までは肝の左葉、S5からS8までは肝の右葉に分類される。


さらに左葉はS1は尾状葉、S2は外惻上区、S3は外側下区、S4は内側上下区に、右葉はS5が前下区、S6が後下区、S7が後上区、S8が前上区に分けられている。


私が腹部超音波で肝臓の検査をする際はまず肋間走査で右葉をS8→S5→S7→S6の順で見ていく。次に肋弓走査再び右葉をS7→S6→S8→S5の順で見ていく。最後に季肋部走査で左葉をS4→S3→S2→S1の順に見ていく。おおまかに言うとこのような感じで肝臓の区域を1つずつ見ていく。


実は腹部超音波の装置のモニターに映し出されている画面はプローブを当てている部分がそのまま表示されているわけではない。上下が反転していてわかりやすく言うと人の身体を下から見上げた像になっている。


私は腹部超音波の研修を他の人よりも長い期間行った。それはこの腹部超音波の画面は上下が反転しているという理屈がなかなか理解できずに、教えて頂いた先輩からなかなか一人立ちのOKが出なかったからである。


肝臓を検査している時も今自分が肝臓のどの区域を見ているのかをはっきりとイメージすることがなかなかできなかった。イメージできないのであればプローブを当てた時にモニターに表示される各区域の像を丸暗記するしかない。だから、このクイノーの区域分類は何回も何百回もくり返しシェーマを描いて頭の中に叩き込んだ。


ちなみにこのクイノーの肝区域分類とはクロード・クイノーというフランスの外科医が提唱した分類方法でそもそもは肝臓の切除手術を行う際に用いられるものらしい。


肝臓の検査でも、手術でも用いられているクイノーの肝区域分類。検査ができるのも、手術ができるもの、すべてクイノーさんのおかげなのである。

めだかの兄弟


先日、我が家にめだかがやってきた。


奧さんが友だちの家に遊びに行ったところ、めだかを飼っていたらしい。で、そのめだかを見ていたらどうしても飼ってみたくなったとのことでどこからかもらってきた。


実は我が家でめだかを飼うのはこれが初めてではない。私が小学生ぐらいの頃もめだかを飼っていたことがある。私がもらってきたのか、父親がもらってきたのかはもう覚えていないが、どこからかもらってきためだかを飼うことになった。


めだかは爆発的に数が増える。最初は数匹だったものの、どんどん数が増えていき、最終的にはベランダに大きなタライを2つくらい置いてその中がいっぱいになるぐらいの数になった。


私はそのことを知っているので、奥さんがめだかを飼いたいと言ってきた時に「めだかはめちゃめちゃ数が増えますよ。私は何もしませんからね」と高らかに宣言した。そして、これは本当に無意識だったのだが欽ちゃんの番組に出ていたわらべの「めだかの兄弟」を口ずさんでしまった。小学生の時に見ていたあのお姉さんたちは今も元気にしているのだろうか……そんなことまで考えてしまった。


今のところは毎日欠かさず息子と一緒にエサをあげているようだ。とばっちりを受けないようにあまり数が増えないことを祈るばかりである。

「ゲップ」を我慢してください


胃部X線検査、通称「バリウム検査」では検査中にゲップをすることは厳禁である。


「検査中はゲップを我慢して下さいね」と検査前に受診者に伝えると「ええっ、そうなんですか」と驚かれる方は意外と多い。検査する私たちの側からすれば当たり前のことが、検査を受ける側にとっては当たり前のことではない場合はたくさんある。だから、検査の際はそのことを十分に認識した上で臨むことが大切である。


バリウム検査というのは簡単に言ってしまうと、発泡剤という薬で膨らませた胃をバリウムで洗って胃の粘膜やひだの状態を観察する検査である。肉眼的分類で0型に当たる「早期がん」を見つけることを最大の目的としている。


受診者の方がゲップがしたくなる原因はこの「発泡剤」である。検査の直前にこの薬を服用するとしばらくして胃の中で炭酸ガスが発生して胃が膨らんでくる。そのためゲップがしたくなるのである。


ではなぜ、検査中にゲップを我慢しなければならないかというとしぼんだ状態の胃では粘膜やひだを詳細に観察することができないからである。しぼんだ状態の胃をいくらバリウムで洗って透視下で観察したとしても、それは不必要な被ばくをしているだけで検査としての意味を全くなしていない。したがって、ゲップをして胃がしぼんでしまった受診者にはもう一度発泡剤を服用してもらうことになる。


だが、検査をしているとどうしてもゲップが我慢できないという受診者の方はいる。特にコーラやビールなどの炭酸水を生理的に飲むことができないという人にこの傾向が見られる。


したがって検査をしているとゲップは我慢できない。でも、検査はしなければならない。という私たちと受診者とのせめぎ合いがたびたび発生する。「被検者の協力なしには良い検査はできない」と以前、ある医師から言われたことがある。この言葉は本当にその通りで私たちが良い検査をするためには受診者の協力が必要不可欠である。


バリウム検査を受診されるみなさん、そういうわけで検査中は「ゲップ」を我慢してください。

脂肪が溜まっています



男性では3人に1人女性では5人に1人、そしてその予備軍は2人に1人と言われている「脂肪肝」。


日々の検査に従事しているとその言葉通りの、いやそれ以上の「脂肪肝」のあまりの多さに驚かされることがある。


もちろん、該当する人がほとんどいない所もある。だが、多い所では自分が検査した人の半分以上が「脂肪肝」だったということもなくはない。


脂肪肝」とは肝臓の中に中性脂肪が蓄積している状態である。初期ではほとんど症状はないがそのまま放っておくと肝機能が低下し、肝炎、肝硬変、肝臓がんになってしまう可能性がある。


普通「脂肪肝」と聞くと一般的にはお酒の飲み過ぎをイメージする方が多いかもしれないが、最近、増えているのが非アルコール性脂肪性肝疾患、通称「NAFLD(ナッフルディー)」である。検査していると飲酒の習慣はないのに「脂肪肝」だったという人は割と多い。


ご存知の通り、肝臓は病気になっても症状が出にくいことから(症状が出る頃にはかなり悪化している)「沈黙の臓器」と言われている。そして、一度でも肝硬変や肝がんになってしまうと治療が大変でその後の生活が一変してしまう可能性が非常に高い。


脂肪肝」の原因は過食アルコールの過剰摂取である。まだ「脂肪肝」の段階であれば生活習慣を少し見直すだけで元気な肝臓を取り戻すことが可能である。


私の施設のある医師は診察の際にどうしてもお酒がやめられないという受診者に対して「長くお酒を楽しみたいのであれば週に1度くらいはお酒を飲まない日を作って下さい」とアドバイスしている。


私も週に1度はお酒を飲まない日を作っている。……のだが、まあ言うのは簡単だが、実行するのはなかなか難しい。

大丈夫ですよ


この前病院でレントゲンを受けたばかりなのですが、今日も受けても大丈夫なのでしょうか?


健診で胸部X線の検査をしていると本当によく受診者からこのような質問される。


大丈夫ですよ


私はこの手の質問にはたいていこのように一言で答える。


おそらく受診者が気にしているのは被ばく線量のことなのだろう。


ちなみに胸部X線検査での被ばく線量は0.02〜0.1ミリシーベルト放射線による人体への影響が確認されている被ばく線量は100ミリシーベルト以上であると考えられているため、胸部X線検査を1回受けたぐらいで人体にはほとんど影響はない(ただし、私の施設では妊娠している可能性のある女性、または、妊娠中の女性に関しては胎児への被ばくによる影響を考慮して胸部X線検査を実施しない)。


私たち診療放射線技師を含む放射線業務従事者は電離放射線障害防止規則という法令によって5年間で100ミリシーベルト1年間で50ミリシーベルトの被ばく線量の限度が定められているのだが、私は診療放射線技師になって以来、いまだかつてこの線量限度を超えて被ばくした人に出会ったことがない。


毎日放射線業務に従事している私たちでさえ、線量限度を超えて被ばくすることなど滅多にないことなのである。放射線業務に従事しない一般の人が健康診断や病院受診の際の胸部X線検査で身体に影響が出るほどの被ばくをすることなど考えられない(厳密に言うと「医療被ばく」には線量限度がないのだが)。


だから健康診断での胸部X線検査は受けても「大丈夫ですよ」。

「ありがとう」と言われる仕事

私が従事している診療放射線技師の仕事というのは「ありがとう」と言われることが多い仕事である。「ありがとう」「ありがとうございました」と検査が終わった後、受診者から声を掛けられることが多い。


こちらは指示された業務を指示通りに行っているだけなのに、受診者から感謝の気持ちを伝えられる。これは診療放射線技師に限らず、医療従事者という仕事ならではの役得なのだと思う。


もちろん、いつも感謝の気持ちを伝えられることばかりではない。胸部X線を撮影する時にネックレスを外して下さいとお願いしたらあからさまに嫌な顔をされたり、胃部X線の検査中に追加で発泡剤を飲むようにお願いしたら、まるでこちらが何か悪いことをしているのかと錯覚してしまうかのような苦しい表情をされたりすることもある。


しかし、そういう受診者の方はほんの一部で大部分の方は検査が終わった後に「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えられる。声を掛けられたこちらも「ありがとう」と言われただけで気分が良くなるから不思議なものだ。「ありがとう」は魔法の言葉である。


どんな仕事も世の中には必要で仕事に優劣をつけるつもりなど決してないのだが、やはり自分の子どもにも「ありがとう」と言われる仕事に就いてもらいたい。仕事をしながらふとそんなことを考えた。

目が見えん!


自分は「老眼鏡」などというものとは生涯無縁の生活を送るのだと思っていた。

目を細めたり、遠ざけたりしながら書類やスマホを見ている人を心の中で小馬鹿にしていた。

ハズキルーペ」は別次元の人たちの道具なのだと信じていた。


……はずだった。


ふと気がつくと自宅で新聞や本を読んだりする時に字が霞んでいるような気がした。仕事の時も書類に記載されてる文字が霞んでいるような気がした。


気がしただけだったのできっと疲れているからだと自分に思い込ませていた。


だが、霞んでいるだけではなくだんだん見えなくなってしまったのである。


字が見えなくなると今度は読むのが嫌になってくる。そんな気持ちを何とかしたくて意を決してJINSへ向かった。


「近い所が見えなくなってきたような気するのですが……」と言って視力検査をしてもらったところ……


完璧な「老眼」になっていた。


検査用のレンズで近くを見たところ、いやいや見える見える。はっきりとくっきりと字が見えて忘れかけていた視界を取り戻した。


こんなに簡単に視界を取り戻せるのであればつまらない意地など張らずにもっと早くメガネを作りに来れば良かったと後悔した。


ちなみにJINSには「中近両用」というメガネもあるのだが、すっかり遠近両用メガネが気に入ってしまった私は家の中ではあまり遠くを見ることはないのでこの中近両用のメガネも作った。お家にいる時はこのメガネをかけて快適に過ごしている。私のようにウダウダと迷っているのであればすぐに作りに行くことをお勧めする。


www.jins.com


「老い」ない人などいないのだ。「事実を事実として受け止める」ことが「老い」と付き合っていくためには大切なのだと改めて思い知らされた。「老い」ることは決して恥ずかしいことではない。