自分を褒めてあげる


忘れられない言葉がある。


予備校時代、大学入試を間近に控えた最後の講義で英語の講師だった富田一彦先生が私たち生徒に向かって言われた言葉だ。


今から私は受験が終わった時の話をします。いいですか、受験が終わった時にがんばった自分をとにかく思いっ切り褒めてあげてください。


富田先生は続けて。


よくプロ野球の選手がヒーローインタビューで「みなさんの声援のお陰で打つことができました。ご声援、ありがとうございました」などと言うが、あんなのは嘘だ。


選手がチャンスで打てたのは選手が地道に練習に励んだ結果であってファンが声援を送ったからではない。


君たちも一緒で大学に受かったのは家族や友だちが応援してくれたからではなく、自分自身が地道に精一杯勉強をがんばったからである。だから、安易に自分の成果をそういう言葉に逃すことなく、がんばった自分を目一杯褒めてあげなさい。


「大学受験」というものにもし意味があるとしたら、1人の人間が自分の力だけで1つのことを精一杯成し遂げた。それくらいしかない。


富田先生はこのように言われた。


あれからもう30年近くの時間が過ぎてしまったが、今でも富田先生の言葉は私の胸に深く刻まれている。